(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは休業手当の概要や目的、休業補償との違いについて解説してきました。
休業手当は従業員の生活を保障するための重要な制度ですので、会社の都合で休業する際には正しく休業手当を支給する必要があります。
ここからは、コロナ禍での休業手当の支給条件や、休業手当の計算方法をまとめていきます。
新型コロナウイルスの流行に伴い休業を余儀なくされたとき、多くの会社が判断に迷うのが、どのような場合に休業手当を支払う必要があるのかということです。
様々なケースがあるため、具体例を以下にまとめました。
休業理由 | 休業手当支払いの要・不要 |
---|---|
新型コロナに従業員が感染した | ×不要 ※傷病手当金の申請が可能 |
新型コロナの感染疑いのある従業員が自主的に休んだ | ×不要 |
新型コロナの感染疑いのある従業員を会社の指示で休ませた | 〇必要 |
休業要請を受け入れ、従業員を休ませた | △一般的には不要とされるが、テレワーク等が可能な場合は必要 |
新型コロナの影響で仕事が減ったため従業員を休ませた | 〇必要 |
学校の休校などで、子供を見るため従業員が働けない | ×不要 |
新型コロナに感染した従業員が回復したが、念のためもう少しの間休ませた | 〇必要 |
その休業が会社の責任によるものかどうかが、休業手当の支払い義務の有無を判断するポイントとなります。
ただし、都道府県知事による休業要請など、会社の責任とは言えない休業の場合であっても、休業手当の支払い義務が無いと言うためには
①外部より発生した事故であること
②経営者が最大の努力を尽くしてもなお回避できないような事態であること
の2点を満たしている必要があります。
「経営者の最大限の努力」として、在宅勤務や別の業務に就かせる等の代替措置を検討するなど、努力を尽くす姿勢が求められることになります。
やむを得ず休業する場合には、従業員に不利益が生じないよう、従業員へ十分な説明をし、可能な限りの対応策を検討・実施するようにしましょう。
休業手当は、平均賃金の60%以上の金額を、実際に休業した日数分支払う必要があります。計算式は次のとおりです。
休業手当=平均賃金×0.6×休業日数
平均賃金は、原則として休業日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数(歴日数)で割った金額です。
休業日以前3か月の賃金総額÷3か月の総日数(歴日数) ・・・①
「休業日以前3か月間」は、直前の賃金締め切り日から遡って3か月のことを言います。また、休業開始日は含めずに、その前日から遡って3か月となります。
賃金の全部または一部が時給制や日給制、出来高制の場合、「最低保障」が設けられています。
最低保障額は、休業日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総労働日数で割った金額の60%の金額になります。
最低保障額=休業日以前3か月の賃金総額÷3か月の総労働日数×0.6 ・・・②
①と②を比べて多いほうの金額が平均賃金となります。
会社の都合で従業員を休業させる場合、会社は休業手当を支給する必要があります。休業手当の支給は従業員の雇用を守りますので、会社と従業員の良好な関係が保たれ、会社が事業を継続していくことにつながります。
このコロナ禍では、休業手当の支給が必要かどうか状況ごとに判断が求められる場面が多くあります。会社は休業手当についてよく理解し、適切に対応するよう心がけましょう。