(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、労基署監査の目的、決まる過程、流れについて解説してきました。監査が来ることがあると分かれば、日頃から労務管理上気を付けるべきポイントが見えてくると思います。
ここからは、労基署監査で実際に見られやすいポイントや監査に備えて対策できることついて解説します。
労基署監査で見られるポイントは、調査ごとに内容が変わりますがおおむね以下の通りです。
昨今では特に、時間外労働や未払い賃金については厳しく見られる傾向にあります。
・事業場・労働者関係(ex.労働者名簿、派遣労働者の有無、外国人労働者の有無)
・労働条件(ex.就業規則、就業規則の周知状況、労働条件通知書)
・労働時間(ex.出勤簿の記録、36協定、時間外労働の実態把握)
・賃金(ex.賃金台帳、時間外手当等の支払い状況や計算方法、最低賃金)
・年次有給休暇(ex.付与状況、取得状況)
・安全衛生管理(ex.安全衛生委員会の設置状況、産業医の選任状況)
・健康管理(ex.健康診断の実施状況、過重労働の有無)
※引用:厚生労働省HPより
調査が決まってやるべきこととしては、労働関係各書類の準備です。
こちらも調査ごとに必要書類が異なりますが、おおむね以下の書類を求められます。
・企業の組織図
・労働者名簿
・賃金台帳
・労働条件通知書
・就業規則
・出勤簿
・36協定
・変形労働時間制を採用している場合の関係書類(労使協定・勤務表等)
・年次有給休暇の取得状況に関する書類
・安全管理者、衛生管理者の選任に関する書類
・安全委員会、衛生委員会などの議事録
・産業医の選任状況と面接指導の制度や実施状況が確認できる書類
・健康診断の実施結果
・ストレスチェックの実施結果
定期監督はやむを得ないですが、従業員からのタレコミや労災時申請による監査は、日頃から法律に沿った労務管理・安全管理に注意することで未然に防ぐことができるかもしれません。例えば、時間外労働や休日労働が発生しているならば当然その分の割増賃金を支払う、36協定を締結して届け出ている、社会保険や雇用保険の加入対象を満たしているならちゃんと加入させる、1年に1回の定期健康診断を実施する、等です。これらは遵守していないと懲役や罰金等の罰則も発生しますので、特に注意しましょう。
労基署の監査は定期的にも行われるため絶対に避けられるというものではないですが、日頃から法律を遵守して労務管理・安全管理をしておけば慌てずに対処することができるでしょう。ただ、「労務監査のために法律を守る」というのは本来のあり方とは違ってきてしまいますので、会社の正常な運営、従業員の方の生活保障、健康管理のための法定遵守を心掛けましょう。