人事労務解説

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人事労務解説 2022.01.05

2021年改正 キャリアアップ助成金不正受給となる観点を解説

(後編です。前回まではこちらからお読みください。)

2021年改正 実は危険キャリアアップ助成金のデメリットとは

前回まではキャリアアップ助成金の概要、2021年からの改正内容について解説していきました。
助成金受給目的で就業規則を変更してしまうと、実態に合わないものができるので実態に合った変更をするのが良いでしょう。
次からはキャリアアップ助成金で失敗するケース、不正受給について解説していきます。

4.キャリアアップ助成金で失敗するケースとは

キャリアアップ助成金の失敗でよくあるケースとして
①未払いの残業代
出勤簿またはタイムカード、賃金台帳で残業代等をチェックします。
残業代の未払いがあると審査が止まってしまい、助成金受給が予定より遅れてしまう場合があります。

②申請の手順を間違えてしまった
助成対象となる期間外に取り組みを実施してしまうことが多いので注意しましょう。

就業規則の届け出漏れ、記載内容に問題がある
助成金を申請するには就業規則の作成、変更が必要となります。
社員区分の記載、改善措置の範囲が曖昧、転換制度についての記載が不十分といったケースが多いです。
就業規則の作成、変更には社会保険労務士などの専門家に見てもらうのが良いでしょう。

④労働関係の法律に違反している
助成金は労働者の処遇改善に対してかかった費用を助成する目的ですので、以下の5つの法律に違反していないことが大前提となります。

・労働基準法
・労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・労働契約法
・最低賃金法

今一度、契約書、就業規則などを法令に違反していないか確認していきましょう。

5.キャリアアップ助成金が不正受給となるケースとは

キャリアアップ助成金が不正受給となるケースとして
①出勤簿や賃金台帳の虚偽の作成
出勤簿またはタイムカードの内容を偽って作成したり、賃金台帳や給与明細の内容を改ざんしたりすること。

②無期転換していないのに、あたかも無期転換したかのように雇用契約書を作成する。

③申請している会社が実態のない会社であること。

④従業員が実在していない。

キャリアアップ助成金の書類を偽って作成、改ざんすると罰則が科せられるので申請する前に
法整備、就業規則などを整えていくことが重要になります。
不正受給となるとどうなるのか、次のコラムで解説していきます。

6.キャリアアップ助成金の不正受給と見なされるとどうなる

キャリアアップ助成金の不正受給と見なされると、様々な罰則があります。
2019年より助成金の不正受給の厳罰化が進み、より助成金の申請の審査も厳しくなっています。
罰則の内容を解説していきます。

①助成金の返還を求められる
受給翌日から返還を終了するまでに年間3%の延滞金に加え、返還額の20%が違約金として請求されます。

社会的制裁
キャリアアップ助成金に関わらず、不正受給をすると労働局のホームページに会社名、代表者氏名が公開されてしまいます。
社会的制裁が大きく、会社の信用にも繋がりますので一番のデメリットになります。

5年間助成金の支給を受け取ることができなくなる
5年間は雇用保険料を財源とした助成金を受けることができません。
また、不正受給に関わった役員などが他の企業で役員などになっている場合も5年間支給停止となります。

④刑事告訴の可能性がある
⑤場合によっては詐欺罪になる可能性もある
助成金の不正受給により、刑事告発され書類送検、詐欺罪で懲役1年6か月の判決になった判例もあります。

社会保険労務士、代理人なども罰則の対象となる
不正受給の厳罰化により、不正受給に関与した社会保険労務士、代理人も連帯債務者として返還を求められます。
不正に関与した社会保険労務士、代理人も同じように5年間助成金申請ができなくなります。

※引用:厚生労働省HPより

まとめ

キャリアアップ助成金は受給額が高く、人気の助成金となります。
そのため、不正受給をしようとする会社は少なからずいます。
キャリアアップ助成金の申請書類を偽って作成したり、従業員がいないのにいるものとして申請したりすると罰則が科せられ、社会的制裁があるので注意しましょう。
キャリアアップ助成金にもコースが様々あるので、会社の方向性に合った助成金を選び申請してみてはいかがでしょうか。

『著者:社労士カワモリ』

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