人事労務解説

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人事労務解説 2022.01.24

障害者雇用とは?助成金をどう活用する?

(後編です。前回まではこちらからお読みください。)

障害者雇用とは?雇用義務人数は?

前回までは、企業に障害者の『法定雇用率』に対する雇用の義務付けについて解説してきました。
従業員が43.5名以上の企業は、1名以上の障害者を雇用義務があり、43.5名未満の企業には雇用義務がありません。
ここからは、障害者雇用する際の注意点と助成金をまとめていきます。

3.障害者雇用をする際の注意点

ここからは、障害のある人を雇用する上の注意点をご紹介します。
大きくわけて以下の3つです。

①障害者差別の禁止

障害者であることを理由に、求人募集、採用、賃金、昇進、教育などを排除したり不利な条件を設けたり、障害のない人を優先したりすることは差別に該当します。なお、積極的な差別是正として『障害者専用求人』を出すことは、禁止される差別には該当しません。

②合理的配慮の義務

募集及び採用時には、障害のある人の雇用と一般雇用との均等な機会を確保するための措置が必要です。
(具体例)

・バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備
・視覚障害に対し、点字や音声を使った採用試験を行うこと
・身体障害に対し、机の高さを調整するなど設備を整えて、作業を行えるよう工夫すること
・精神障害に対し、休憩や休暇を調整するなど、通院や体調に配慮すること
・知的障害に対し、生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
・LD、ADHD、自閉症等の発達障害に対し、口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示

③相談体制の整備・苦情処理

事業主は、障害者からの相談に適切に対応するために、相談窓口を設置し、労働者に周知すること、相談者のプライバシーを保護しなければなりません。また、相談したことを理由に不当な扱いをすることも禁止しています。

4.障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度とは、障害者の雇用促進と安定を図るために設けられた制度です。
企業で法定雇用率が定められている一方で、障害者雇用が進んでいない企業もあります。このような場合に、法定雇用未達成の障害者の人数分を『障害者雇用納付金』として納めなければなりません。

障害者雇用納付金とは、障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業の経済的な負担を調整するために支払うものであり、法定雇用率を達成できなかった罰金ではありません。

障害者雇用納付金を支払っても、障害者雇用義務を果たしたことにはならず、未達成状態が続くとハローワークの雇用率達成指導を受けたり、企業名を公表されたりすることがあるので注意が必要です。

また、徴収される金額については、法定障害者雇用率を達成していない場合、法定人数から不足している障害者1人あたり月に5万円。ただし、障害者雇用の義務は、従業員が45.5人以上の企業に課されるものですが、納付金の対象となっている企業は、常用労働者が100人超の規模となります。

5.障害者雇用をするときに使える助成金

事業主が障害者雇用にあたって、設備の整備や雇用管理のために必要な介助をつける措置などを行った場合、内容に応じて助成金が支給されます。
助成金には、例えば次のようなものがあります。

①障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

エレベーターの設置など、障害者の雇い入れや継続雇用に必要な施設、労働者の福祉の増進を図るため、保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置または整備する場合に、その費用の一部が助成されます。

②障害者介助等助成金

重度身体障がい者の新規雇い入れ、または継続雇用をはかるための助成金です。職場介助者を配置する、手話通訳を雇用する、障害者相談窓口担当者を置くなど、適切な雇用管理のための配慮を行った場合に助成されます。

③重度障害者等通勤対策助成金

通勤が特に困難な障害者の新規雇い入れ、または継続雇用をはかるうえで、その通勤を容易にするための措置をおこなう事業主等に対して助成されます。通勤用バスの購入や会社に通いやすい住宅の賃借、バスの運転手の雇用など、重度障害者の通勤対策を行った場合に対象費用の3/4が支給されます。

④重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者を多数雇用する事業主が、必要な設備の整備や施設の設置を行った場合に助成されます。
対象障害者10人以上を1年以上継続して雇用し、継続して雇用している労働者数の割合が20%以上であることが条件になり、支給対象費用の2/3(特例の場合は3/4)が助成されます。

まとめ

障害者雇用制度は、障害のある人を対象にした専用の雇用制度です。企業には、障害者雇用が義務付けされており、雇用することで助成金による支援を受けとれる制度もあります。障害者のある人の活躍の機会が広がる一方、企業側は多様な人材の活躍が期待できるというメリットがあります。障害者雇用制度を十分に活用できるように仕組みをしっかり理解することが大切です。

『著者:社労士カワモリ』

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