(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは出向の概要、出向の分類、出向・派遣・左遷の違いについて説明しました。
出向者は出向先と出向元で契約を結び、基本的に出向先の就業規則や会社のルールなどに従います。
ここからは、出向した際に各種保険がどうなるのか、給与はどのように天引きされるのか解説していきます。
出向した場合、給与は出向先、出向元どちらか支払うという明確なルールがないため出向契約によりどちらが支払うか決定します。
給与は基本的に「労働の対価」として支払われるため、出向先の会社が支払うことが一般的です。
給与の支払い方も様々あり、直接給与と間接給与があります。直接給与とは、出向先が出向者に給与を支給することを言い、間接給与は出向元が出向者に給与を支払うことを言います。
保険料の負担は
・社会保険は直接、給与を支払う会社が社会保険料を負担する。
・給与を出向先、出向元で支払っている場合は支払額に応じた社会保険料や失業保険を控除する。
・雇用保険の場合、直接給与の場合は出向元が負担、間接給与の場合は支払額が多い会社が負担する。
・労災保険は出向先が負担する。これは労働基準法に定められている安全配慮義務があるからです。
健康保険・ 厚生年金保険 | 雇用保険 | 労災保険 | |
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①出向先が支払う (直接支給) | 出向先 | 出向先 | 出向先 |
②出向元が支払う (間接支給) | 出向元 | 支払い額が多い方 | 出向先 |
③それぞれが支払う | 支払い額に応じて それぞれが納付 | 支払い額が多い方 | 出向先 |
従業員を出向させる場合、出向辞令と出向通知書兼同意書を作成し同意を得なければいけません。
出向辞令は該当する従業員、出向する旨を記載して本人に渡します。
また、出向の開始日から終了日、出向先の会社名を記載する必要があり、出向通知書兼同意書は出向先の会社情報、所属、労働条件など記載する必要があり同意を得なければいけません。
出向契約書を作成するにあたり必要事項は次のようになります。
① 出向先の会社名、出向元の会社名、住所、出向する従業員の名前
② 出向者がする仕事内容
③ 出向期間(出向開始日、出向終了日)
④ 給与、賞与の支払いについて
⑤ 社会保険の支払いについて
⑥ 出向料について
⑦ 協議事項
出向には2種類の出向があることが分かりました。出向は必ず出向先、出向元での同意、従業員と会社との間の同意が必要になります。
また、出向してから社会保険、雇用保険、労災保険の負担が通常の場合と異なるので注意し、会社間でトラブルにならないためにも出向契約の条件などしっかり決めていき、出向する従業員の不利益にならないように気をつけていきましょう。