(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、助成金の不正受給の取り扱いについて解説してきました。
助成金は実際に受給したかどうかは問われず、故意に偽って申請をするだけでも不正受給と取り扱われるので、安易な気持ちで助成金の手続きを行わないことが重要です。
ここからは、不正受給とならない為の気をつけるポイントとペナルティをまとめていきます。
故意に偽って申請することはもちろんですが、故意でなくても、間違った申請で助成金を受給すれば不正受給と取り扱われます。助成金の申請とは直接関係ない部分でも、ハローワークや労働局の調査が厳しくなってきています。審査時にはチェックされることがなかったとしても、後から調査が入ることもあるため、前提として正しい労務管理、帳簿の運用を行う必要があります。
以下を、申請前には確認してください。
① 雇用保険加入の事業主であるか
② 社会保険・労働保険への加入をしているか
③ 賃金が最低賃金を下回っていないか
④ 時間外手当が支払われているか
⑤ 出勤簿・賃金台帳等の裏付けとなる関係書類があるか
雇用調整助成金の不正受給が発覚した場合、どのようなペナルティがあるか。
助成金の不正受給が2019年4月から厳罰化され、主に以下がペナルティとなります。
不正受給が発覚した場合、都道府県労働局は、次の内容を公表します。
・事業主の名称及び代表者氏名
・事業所の名称及び所在地、概要
・不正受給の金額及び不正した内容
・社会保険労務士または代理人が不正に関与していた場合、それらの者の名称や所在地等
不正受給が発覚した場合、最初の判定基礎期間以降に支給された助成金の全額の返還が必要です。
また、支給申請中の助成金は不支給となります。
加えて、不正受給の日の翌日から、返還すべき金額を納付する日までの期間につき、年5%の割合で算定した延滞金、さらに不正受給の発覚により返還を求められた助成金の額の20%相当額を上乗せして支払わなければいけません。
詐欺、脅迫、収賄罪法など、特に悪質な場合や多額の不正受給がある場合には刑事告発がなされ、裁判が行われます。
不正受給が発覚した場合、不支給とされた日、または支給を取り消された日から5年間は雇用保険料を財源とした全ての助成金を受けることができません。また不正受給に関わった役員等が他の企業でも役員等となっている場合には、その企業も5年間助成金の支給停止になります。
1. 支給前の場合は不支給となります。
2. 支給後に発覚した場合は、支給された助成金を返還しなければなりません。
3. 支給前の場合であっても支給後であっても、不正受給の処分決定日から起算して3年間は、その不正受給に係る事業所に対して雇用関係助成金は支給されません。
4. 不正の内容によっては、不正に助成金を受給した事業主が告発されます。詐欺罪で懲役1年6か月の判決を受けたケースもあります。
5. 不正受給が発覚した場合には、事業主名等の公表を行うことがあります。
上記1~5のことにあらかじめ同意していただけない場合、雇用関係助成金は支給されません。
労働局をはじめ各助成金の支給機関においては、助成金の不正受給がないかどうか常に情報収集するとともに法令に基づく立入検査等の実地調査をしております。
軽い気持ちで、偽って助成金を申請すると取り返しのつかいに事態になる可能性もあります。
不正受給で、会社名や事業主名が公表されると社会的信用を失うことに成りかねません。
申請に関して、不明な点などがある場合には、労働局へ問い合わせるなど丁寧に進めた上で、申請を行うことが大切です。
労務サポートちゃんねる