(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
産業医とは、医学的な立場から労働者の健康保持増進や職場環境の改善などについて助言する医師のことで、従業員の健康と安全に働ける環境を守るため、従業員50名以上の事業場では産業医を選任することが義務付けられています。
ここからは、産業医の主な仕事内容と、産業医が出席する安全衛生委員会とは何かについて解説していきます。
産業医の職務は、労働安全規則第14条第1項で次のように定められています。
上記の要件に基づき実際に行われている具体的な仕事内容を下記にまとめました。
産業医はこれらの活動を通じて労働者の実態と現状を把握し、より適切な健康管理等を行っていきます。
健診結果で異常所見があると診断された労働者について、事業主は産業医からの意見を聴取したうえで、必要に応じて就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮など、就業上の措置を取らなければなりません。
また、健診結果にかかわらず、産業医は心身の健康に不安のある労働者との面談も行います。
職場巡視とは、産業医が作業環境を実際に見て回り、安全衛生上の問題点を見つけて改善していくことで、原則として月1回以上行う必要があります。
ただし、「事業者の同意を得ること」と「産業医が事業者から毎月一定の情報の提供を受けること」の2つを満たせば2か月に1度の職場巡視でも可能です。
月80時間超の時間外・休日労働を行った労働者のうち、疲労の蓄積が認められる者が申し出た場合は、面接指導を行います。
労働者が50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務付けられており、産業医はその実施者となることが認められています。
ストレスチェックの結果、医師による面接指導が必要と判断された人から申し出があった場合に面談を行います。
体調不良による遅刻・早退・欠勤が続いたり、休職を希望する労働者がいた場合に、産業医が休職面談を行うことで休職が妥当かを医学的に判断します。
また休職中の労働者が復職を希望した場合に面談を行い、「復職が可能かどうか」を産業医として意見します。
衛生委員会は、労働災害の防止や職場環境の改善を通して、労働者の健康を維持・増進することを目的とし、業種を問わず、常時雇用している労働者数が50名を超えた事業場では、衛生委員会を開催しなければなりません。開催後は、話し合った内容を労働者へ周知し、議事録を作成します。
産業医が署名・捺印をした議事録を3年間保存することが必要で、労働基準監督署の立ち入り検査では議事録の確認も行われるため、作成と保管は必ず行うことが大切です。
衛生委員会では産業医を構成員とする必要があります。また、業種と雇用人数によっては安全委員会も開催しなければなりません。
両委員会の設置が義務付けられている事業場では、それぞれの委員会の設置に代えて「安全衛生委員会」を設置することができます。
安全衛生委員会とは、衛生に関係して調査・審議等を行う場のことで、労働災害防止の取り組みを労使一体となり行うことを目的としています。
安全衛生委員会は、毎月1回以上開催しなければなりません。
産業医は安全衛生委員会への出席が義務付けられているわけではありませんが、その構成員として、専門的立場から指導や助言を行い、現場と会社との調整役として働くことが期待されています。
働き方改革関連法の施行により、産業医の権限は以前よりも強化されています。それに伴い、企業も様々な取り組みを行うことが求められています。
事業主は産業医の役割や仕事内容について正しく理解し、その知識や存在を活用して健康で活力ある職場づくりに役立てていきましょう。