(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、有給休暇は雇い入れ日から起算して6ヵ月間継続勤務し、全労働日(労働義務のある日)の8割以上出勤した労働者に対して、継続しまたは分割した10労働日の有給休暇が付与されることについてまとめてきました。
ここからは、パート・アルバイトの有給休暇、年5日取得義務についての注意点をまとめていきます。
パート・アルバイトの労働者などに対して付与する有給休暇の制度を『比例付与』と言います。
パート・アルバイトの労働者などに対しても要件を満たせば有給休暇が発生しますが、公平性の観点か所定労働時間等が少ない労働者の有給休暇の付与日数は所定労働日数に応じた通常よりも少ない日数とされています。
以下のいずれにも該当する者が比例付与の対象となります。
① 週の所定労働時間数が4日以下
※週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、年間所定労働日数が216日以下
② 週の所定労働時間が30時間未満
上記2つの一方にしか該当しない労働者については、比例付与の対象外であり、原則的な付与日数が付与されます。
※週の所定労働日数が5日以上であれば、週の所定労働時間が短くても比例付与の対象とはなりません
比例付与の対象となるか否かは、基準日における所定労働日数で判断しますので、基準日後の年度途中で所定労働日数等が変更された場合であっても、既に発生した付与日数は増減しませんので注意が必要です。
週所定労働日数 | 1年間の所定日数 | 雇入れの日から起算した勤続期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
2019年4月に施行された法改正により『年5日の有給休暇の取得』が義務化されました。
使用者は、10労働日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの5日については、毎年付与された日を起算日として起算日から1年以内の期間に、労働者ごとに労働者が指定する日に有給休暇を取得させなければいけません。
この法改正の背景には、『働き方改革』があり、働き手が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようになるための改革です。その中でも働き手のニーズの多様化という課題を解決するため、取得率が低かった有給休暇の取得率を上げるべく、使用者側から5日間を指定して取得してもらうように義務化したのです。
使用者がこの付与義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます。
かかる違反は、労働者ごとに成立すると考えられるため、理屈上、5日間の有給休暇を取得させなかった対象者が10人であれば、300万円以下の罰金まで科される可能性があります。
法改正により、年10日以上の有給休暇を保有する労働者へ年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。違反した使用者には、対象従業員1人あたり30万円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、管理体制の強化と有給休暇を取得しやすい環境づくりが必要ではないでしょうか。