(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までに解雇の概要、解雇の種類、解雇の条件について解説してきました。解雇を行うには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になります。これは試用期間中の従業員に対して行う解雇であっても同様です。ここからは試用期間中の解雇と解雇を行う手順について解説していきます。
試用期間中であっても解雇をするには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性と解雇予告などの所定の手続きをする必要があります。
試用期間とは一般的には従業員としての適格性や職務遂行能力を見極め、正式に採用をしても問題がないか判断する期間とされています。試用期間中に正式に採用することが難しいと判断した場合は雇用契約を解消することになります。この雇用契約に解消は解雇ということになり、30日以上前に正式採用をしないことを予告(解雇予告)するか、平均賃金の30日分以上の金銭(解雇予告手当)を支払う必要があります。試用期間中であっても解雇には変わらないため、所定の手続きをする必要があります。試用期間中の従業員を解雇する場合は、通常の従業員を解雇するときと比べて、解雇の判断にあたって社会通念上相当と認められる範囲が広くなります。
14日以内の解雇であれば解雇予告手当を支払わず即日解雇をすることができますが、自由に解雇できるというわけではなく客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められることになります。
■解雇を行う前提条件
有効に解雇を行うには、本人への指導や処分の実績が重要になります。本人の行為が会社にどのような影響が及ぼすとか会社としての考えを本人に理解させます。それでも本人が行動を改めないような場合は段階的に始末書の提出や減給、出勤停止などの処分を重ねた後で、それでも本人が反省しないような場合に最終的な選択肢として解雇をする必要があります。
整理解雇については、会社の解雇回避努力として、事前に新規採用の停止、役員報酬の不支給・減額、賞与の不支給・減額、時間外労働・休日就業規則労働の削減、配置転換、出向、転籍、希望退職者の募集を行い、整理解雇を回避するための努力をする必要があります。最終的に希望退職に応じない従業員に対して整理解雇を行うことになります。
■解雇予告
労働基準法では少なくとも30日前に解雇の予告を行う、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払う又は解雇予告と解雇予告手当を組み合わせていることを義務付けられています。
・解雇予告期間の考え方
・予告と予告手当の組み合わせの例
解雇を行うには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になります。解雇の有効性については会社と従業員の間で争うになるケースが多くあります。解雇を行う場合は専門家に相談をしながら慎重に行うようにしましょう。