(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、有給休暇年5日義務化の概要や背景、対象者についてまとめてきました。有給休暇取得率の低さや、労働者の働き方やニーズが多様化していくという課題もあり、企業には取得させる義務が課せられています。ここからは、有給休暇年5日義務化の対策や違反した際の罰則についてまとめていきます。
年5日の有給休暇義務化に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられます。
この罰則は労働者ごとに成立すると考えられているため、5日間の有給休暇を取得させなかった対象者が10人であれば、300万円以下の罰金が科さられる可能性があります。
有給休暇に関して罰則となる場合としては他にも、「企業からの時季指定について就業規則に明記していない場合」や「労働者の求める時季に有給休暇を与えなかった場合」があります。
有給休暇を自発的に5日以上取得してくれればベストですが、なかなか取得できない、しづらいという実態が多いです。そこで有給休暇取得義務の現実的な対策として、労働者と合意の上、有給休暇の「時季指定」を行うことが挙げられます。
有給休暇の管理表を作成して労働者ごとの有給休暇付与・取得状況を把握しておき、有給休暇を年5日取得できていない労働者については、直接協議しその労働者も納得の上で有給休暇の取得日を決めるのがよりよい選択です。
他の方法としては、有給休暇の「計画的付与制度」が挙げられます。有給休暇の内5日間を超える日数については、労使協定を結んだ上で企業側があらかじめ計画的に有給休暇とする日を指定することができます。年末年始やお盆休みの前後を有給休暇と指定することで、大型連休とするパターンが多く見られます。
事前に計画を立てて有給休暇の取得日を決められるため、事業の見通しを立てやすくなり、管理の負担も軽減することがメリットとして考えられます。
有給休暇が年5日義務化に違反した場合は非常に重い罰則が科されることとなります。
労働者の健康への配慮として有給休暇を取得させるという目的が前提ではありますが、会社自身を守るためにも、有給休暇を取得しやすい環境を整えることが重要ではないでしょうか。