(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、就業規則の概要、作成の義務、作成時の注意点について解説してきました。
一定以上の規模の事業所には就業規則の作成・届出の義務があり、違反した場合は30万円以下の罰金が科せられることがあります。
ここからは、就業規則の届出方法と就業規則の不利益変更について解説していきます。
就業規則の作成や変更をする場合、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者に変更後の就業規則に関して意見を聴く必要があります。そしてこの意見を記した書面と事業所の名称、事業所の所在地、使用者氏名等を記載した就業規則(変更)届を添付して、労働基準監督署長に届出を行います。この過半数労働組合等への意見聴取は意見を聴くだけで足り、同意までは必要ありません。たとえば就業規則に全面的に反対する意見であっても効力に影響はありません。同意を記した書面には代表者の署名または記名押印が必要です。
賃金の減額や就業時間の延長などの労働者の不利益に就業規則を変更する場合は、通常の就業規則の変更とは違う手順をとる必要があります。
就業規則を含めた労働条件の変更にあたっては、原則として労働者の合意に基づいて行う必要があります。
また、就業規則の変更により、労働者の不利益に労働条件を変更することは原則としてできません。
ただし、
①変更後の就業規則を労働者に周知
②就業規則の変更が合理的なもの
である場合は例外として不利益変更の変更が認められます。
就業規則の変更が合理的なものであるか否かの判断は、次の要素から判断されます。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の就業規則の変更に係る事情
なお、これらの変更の合理性については会社が立証責任を負います。
例えば、会社の業績悪化に伴い、基本給を下げるという場合、賃金という従業員にとって非常に重要な労働条件の変更となるため、労働条件の必要性の判断にあたっては会社の経営状況の悪化の立証だけでなく、労働者の不利益の緩和のために経過措置などを行ったかどうかも就業規則の変更の合理性の判断にあたっては重要なものとなります。
また就業規則の変更にあたって、より多くの従業員から同意を取ることも重要となります。同意を取れた従業員が多ければ、就業規則の変更の合理性を肯定する材料となります。
就業規則は会社のルールを定めたものです。常時10人以上の従業員を雇用する事業所は就業規則を作成して届け出る義務があり、これに違反した事業主には30万円以下の罰金が科せられる場合があります。
また就業規則に定められた内容は従業員にとって、義務であると同時に権利でもあるため、会社側の都合で一方的に就業規則を変更して権利を奪うことは認められません。就業規則の不利益変更をする場合には慎重に行っていく必要があります。