(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは裁量労働制の概要と裁量労働制の種類、裁量労働制とフレックスタイム制の違いについて説明しました。裁量労働制を導入するには労働者との間に協定を結び、労働基準監督署に届け出を提出しなければいけません。
ここからは、裁量労働制のメリット・デメリットを説明していきます。
裁量労働制のメリットとして
労働時間が個人で自由に決められるため、仕事量や都合に合わせて設定することができます。
例:所定労働時間が8時間と定めている場合
4時間働いても、10時間働いても「8時間」働いたとみなすということになります。
裁量労働制は労働者に仕事のやり方など委ねているので、個人の裁量に任されます。
裁量労働制はみなし時間で給与計算をするので、ある程度の人件費の予測をすることができ、給与計算も比較的早く計算することができます。
給与計算時に1人1人の残業代の計算や、休日出勤があった場合の計算など管理する上で負担が大きくなってしまいます。裁量労働制の場合、原則として一定の固定給を計算するので大きな負担軽減になります。
裁量労働制のデメリットとして
裁量労働制実態調査によると一般の労働者に比べて裁量労働制の方が労働時間などが上回っている結果が出ています。長時間労働をすることによって、過労死のリスクが高まる可能性があります。近年では労働者の保護に国の政策として改正がされているので労働者に委ねてはいても労働時間の管理などは注意が必要となります。
長時間による労働時間で働いても所定労働時間働いたとみなされるので基本的に残業代が出ません。
しかし、みなし労働時間が8時間を超える、深夜残業、休日出勤は例外的に残業代が発生します。
裁量労働制を導入するにはいくつかの手続きをしなければいけません。
1.労使協定を結ぶ
労使協定で定める内容が
・対象業務
・対象の業務遂行の方法、時間配分
・労働時間
・対象となる労働者の状況に対して実施する健康・福祉確保の措置内容
・対象労働者からの苦情処理のための措置内容
・協定の有効期間
となります。
2.協定届作成
専門業務型裁量労働制に関する協定届を作成する。
3.就業規則の変更
就業規則の変更には
・労使協定により専門業務型裁量労働を命じることがある
・専門業務型裁量労働制の対象者は始業・終業時刻に例外があること
・専門業務型裁量労働制の対象者は休憩時間に例外があること
・休日労働、深夜労働をする場合が別途申請が必要であること
上記の内容を規定する必要があります。
4.労働基準監督署に届出する
5.雇用契約書を更新する
新たに雇用契約書を締結する必要があります。
1.労使委員会の設置
労使委員会は会社側、従業員1名ずつの構成は認められないため、従業員の代表委員が全体の半数を占めるように構成します。労使委員会で審議する内容として給与、労働時間等の労働条件などを話し合うためあらかじめ日程調整などはしておいた方が良いでしょう。
2.労使委員会で決議を行う
労使委員会に出席している5分の4以上が決議に必要となります。
3.就業規則の変更の変更
専門業務型裁量労働制と同様、就業規則の変更の変更をします。
4.労働基準監督署に届出をする
5.対象者と同意を得る
6.制度の実施、制度導入の手続きをする
会社の管轄している労働基準監督署に6か月に1回定期報告が必要。
裁量労働制は限定された業種、要件によって導入できるものでどの業種でも導入できる制度ではありません。
また、導入するにあたって雇用契約書の変更、就業規則の変更の変更など導入にかなり時間がかかる制度ではあります。
しかし、労働者は自由な労働時間で働くことができ、会社は労務管理がしやすくなるなどメリットはたくさんあります。
導入前に本コラムを見ながら導入を検討してみてはいかがでしょうか。