人事労務解説

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人事労務解説 2021.11.02

遺族年金とは?支給金額や手続きを解説

遺族年金とは?支給金額や手続きを解説

(後編です。前回まではこちらからお読みください。)

遺族年金とは?受給額の計算方法を解説

前回までは、遺族年金とは、残された遺族の生活を安定や保障するために設けられている年金制度であり、大きく分けて『遺族基礎年金』と『遺族厚生年金』の2種類あることについて解説しました。
ここからは、遺族年金の受給額や受給するための手続きについての解説をまとめていきます。

3. 遺族年金はいくら受け取れる?

『遺族基礎年金』が受給できる年金の額

遺族基礎年金の年間の支給額は780,100円を基礎として、子の人数に応じた加算が行われます。
つまり、家族構成によってもらえる年金の額が決まります。

子の加算

遺族基礎年金の支給額(年額)=780,100円+子の加算
第1子・第2子それぞれ224,500円
第3子以降1人あたり74,800円

親が死亡して子が遺族基礎年金をもらうときは、第1子については780,100円として計算し、第2子以降に子の加算額を適用します。ただし、それぞれの子がもらう年金の額は全員の分を合算して人数で割ったものとなり、第1子だけがたくさんもらって、第2子以降は少ないということにはなりません。
子が3人以上いる場合は1人増えるごとに74,800円が加算されます。
また、子が一定の年齢に達したなどの理由で遺族基礎年金の支給対象から外れる場合は、子の加算が減額されます。支給対象となる子がいなくなれば、遺族基礎年金をもらうことができなくなります。

『遺族厚生年金』が受給できる年金の額

遺族厚生年金は、老齢厚生年金の4分の3に相当する額です。
遺族厚生年金の額は、死亡した者が厚生年金に加入していた期間の報酬や給与や賞与の金額から計算されます。ただし、死亡した者が短期要件に該当するか長期要件に該当するかによっても異なります。
また、遺族厚生年金の計算に使う報酬の額は、平成15年4月を境に平均標準報酬月額平均標準報酬額に分かれ、平均標準報酬月額には賞与が含まれず、平均標準報酬額には賞与を月数で割った金額が含まれるという違いがあります。

 

遺族厚生年金の原則額/短期要件と長期要件

要件年金額給付乗率と被保険者期間の扱い
短期要件報酬比例の年金額×4分の3障害厚生年金の場合と同様
長期要件報酬比例の年金額×4分の3老齢厚生年金の場合と同様

短期要件と長期要件の場合の計算方法は、次のように、給付乗率(平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数×3/4で計算)とその計算の基礎となる被保険者期間の月数の取り扱いが異なります。

死亡した人の要件が短期要件に当てはまる場合(若くして死亡した場合など)

給付乗率定率
被保険者期間の月数300に満たないとき300として計算

厚生年金の加入期間が300か月(25年)に満たない場合でも、加入期間が300か月あるものとして年金の額を計算します。

死亡した人の要件が長期要件に当てはまる場合(すでに老齢厚生年金をもらっていた場合など)

給付乗率読み替え措置あり(昭和21年4月1日以前生まれ)
被保険者期間の月数本来の被保険者期間の月数で計算

昭和21年4月1日以前に生まれた人について経過措置があり、上記の式の「1000分の7.125」と「1000分の5.481」がそれぞれ増額されます。

『中高齢寡婦加算』と『経過的寡婦加算』

遺族厚生年金の中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算は、一定の要件を満たす死亡した者の妻に支給されます。この加算は妻がもらうことを前提としており、妻が死亡して残された夫は対象にはなりません。
中高齢寡婦加算は、40歳以上であって遺族基礎年金がもらえない妻の年金を補うものです。

次のいずれかの要件を満たした者は、遺族厚生年金に年額額58,510円が加算されます(遺族基礎年金の4分の3に相当)。

長期要件被保険者期間の月数が240以上であること
短期要件特に要件なし
原則遺族厚生年金の受給権を取得した当時(=夫の死亡当時)40歳以上65歳未満であること
子のある妻に特有40歳に達した当時死亡した夫の子で遺族基礎年金の受給権者であるものと生計を同じくしていたこと

夫が死亡したときに40歳以上65歳未満であって、遺族基礎年金の支給対象となる子がいない。
40歳になった時点で子がいるため遺族基礎年金をもらっていたが、子が支給対象から外れたことで遺族基礎年金がもらえなくなった。
このほか、死亡した夫の要件が長期要件に該当する場合は、厚生年金の加入期間が20年以上あったことが必要です。短期要件に該当する場合は、加入期間の要件はありません。
妻が65歳になると自身の老齢年金がもらえるようになるため、中高齢寡婦加算はもらえなくなります。
経過的寡婦加算は、中高齢寡婦加算をもらっていた妻のうち昭和31年4月1日以前に生まれた人に対して65歳から支給されます。
また、昭和31年4月1日以前に生まれて65歳になってから遺族厚生年金がもらえるようになった妻にも支給されます(夫の加入期間の要件があります)。
かつて専業主婦の年金制度への加入は任意であったため、その期間に年金制度に加入していなかったことで減少する老齢基礎年金を補う目的があり、年間の支給額は妻の生年月日によって異なり、生年月日が遅くなるにつれて減少します。

遺族年金

4. 遺族年金を受給する手続き

遺族年金を受給するためには、受給することができる遺族が請求手続きを行わなければなりません。遺族基礎年金のみをもらう場合は死亡した人の住所の市区町村役場で、遺族厚生年金をもらう場合は年金事務所または街角の年金相談センターで手続きをします。
窓口が異なるため、その窓口についてもあらかじめ確認しておく必要があります。
遺族年金を受給するための手続きは以下になります。

  • ①必要な書類を取得し確認する。
  • ②年金請求書と必要書類を合わせて窓口に提出
  • ③年金証書が自宅に送られてくれば確認(書類提出から2ヶ月以内に送付される)
  • ④年金証書受取から2ヶ月程度で年金の振込が開始

※①の必要書類

  • 年金請求書
  • 年金手帳
  • 戸籍謄本
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 死亡した人の住民票除票の写し(世帯全員の住民票の写しに含まれる場合は不要)
  • 請求者の収入が確認できる書類(所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など)
  • 子の在学証明書または学生証など(高校生の子がいる場合)
  • 死亡診断書(死体検案書)のコピー
  • 受け取りを希望する預金口座の通帳など
  • 他の公的年金で年金をもらっている場合は年金証書

まとめ

遺族年金とは、残された遺族の生活を安定や保障するために設けられている年金制度です。
受給できる遺族年金の種類と金額は死亡した者が加入していた年金制度と、遺族の家族構成など年齢によって異なるため、自分の場合はいくら受給できるかなど正確なシミュレーションや、年金制度に関する疑問点については、近くの年金事務所で相談するとよいでしょう。

『著者:社労士カワモリ』

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