(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは労使協定について、労使協定と労働協約との違いについて解説しました。
繫忙期など、労働時間を超えてしまうことはよくあるケースだと思います。
労働時間を超えて働く場合は労使協定を結んだ上で届出をしていくことになります。
次からは労使協定が必要な届出を解説していきます。
労使協定を必要とする届出は主に労働者に対して影響が大きいもの、労働基準監督署が把握しておく必要がある届出が該当します。
① 労働者の委託による貯蓄金の管理に関する労使協定
社内預金制度のことを言います。会社側が従業員の給与の全てまたは一部を強制的に貯金させることを禁止としています。会社側が労働者に委託を受けて貯金、管理するための届出となります。
② 1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定
各日、週ごとに労働時間を決め、1日8時間以上働いても残業代が発生しないような届出となります。
週ごとに繁忙期、閑散期がある場合に利用する制度です。
③ 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
1ヶ月以上、1年未満の変形労働時間制となります。繫忙期、閑散期によって労働時間や週の出勤日数を増減させる制度です。
④ 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
従業員の人数が30人未満の小売業、料理・飲食業などで1週間単位の労働時間を増やすことができる制度です。
⑤ 時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)
1日8時間、週40時間以上を超えて従業員を働かせる際に必要な届出となっています。
⑥ 事業所外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
営業、在宅勤務などで従業員の労働時間の管理が難しい場合が多くあります。
所定労働時間働いてなくても所定労働時間働いたことになり、その分の給与が支給される制度となります。
⑦ 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
仕事の種類によって専門性が高い場合、従業員に時間配分や仕事の流れなどを従業員に任せる働き方を言います。
労使協定が不要な届出は
① 賃金から法定控除以外の控除を行う場合
② フレックスタイム制に関する労使協定(生産期間が1か月を超えない場合)
③ 休憩の一斉付与の例外
④ 年次有給休暇の計画的付与
⑤ 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合
⑥ 育児休業、看護休暇及び介護休業ができない者の範囲
労使協定は従業員側の不利益にならないように会社と従業員の間で結ぶ協定のことで、労働基準監督署に届出と一緒に提出するものになります。
会社側も繁忙期や急なお客様対応で労働基準法により定めた労働時間を超えて働かせたいケースは多々あると思います。
その際に労使協定を届出し、従業員に対して法定労働時間を超えて働かせることを例外として認めることができます。
労使協定の他に就業規則などに記載する必要がある場合もあるので、各種届出に関してよく調べてみてはいかがでしょうか。