人事労務解説

人事労務解説

人事労務解説 2021.12.27

有期雇用契約の無期転換ルールとは

(後編です。前回まではこちらからお読みください。)

有期雇用とは?無期雇用との違いやメリット・デメリットを解説

前回までは有期雇用契約の概要や無期雇用契約との違い、それぞれのメリット・デメリットについてまとめてきました。
ここからは、有期雇用契約を無期転換する時のポイントや注意点、キャリアアップ助成金との関連について解説していきます。

3.無期転換ルールのポイントや注意点

無期転換ルールとは、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、有期契約労働者の申し込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換されるルールのことです。

次の要件が揃った時、有期契約労働者には無期労働契約への転換を申し込む権利が発生します。
・有期労働契約の通算期間が5年を超えていること
・契約の更新回数が1回以上あること
・現時点で同一の使用者との間で契約していること

契約期間が1年の場合は5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合は1回目の更新後の3年間に、無期転換の申込権が発生することになります。
無期転換の申し込みがあった場合、申し込み時の有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約となります。
ただし、無期転換の申込みに関する説明・周知することは事業主に義務付けられていませんので、5年を超えたら自動的に無期契約に転換されるわけではなく、労働者による申し込みが必要です。

有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が一定期間あると、通算契約期間5年がリセットされます。
これをクーリングといいますが、クーリング期間が6か月以上あるときは、その期間より前の有期労働契約は通算期間に含めません。

無期転換ルールを導入する際には、法の趣旨に反しないよう、次の点に注意しましょう。
就業規則の整備が必要
無期労働契約に転換された労働者に対して、どのような労働条件を適用するかを検討したうえで別段の定めをする場合には、適用する就業規則にその旨を規定する必要があります。
就業規則を変更したり、新たに就業規則を作ったりした場合は、労働基準監督署に届け出た後、社内に周知しなければなりません。

②雇止めが無効になる場合がある
期間の定めのある雇用契約において、雇用期間が満了した時に使用者が契約を更新しないことを雇止めといいます。
雇止めはあくまでも契約期間の満了なので、更新しなかったとしても直ちに違法になるわけではありませんが、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。
合理的理由がなく、社会通念上相当と認められない場合、雇止めが許されない場合もあるので注意が必要です。

③無期転換の申込は受理が前提
無期転換ルールの条件を満たす有期契約労働者が、契約期間終了までに無期転換の申込をした場合、使用者は申込を承諾したものとみなされ、断ることが出来ません。
あくまで労働者が無期転換の申込をした場合にのみ無期契約に転換されるものなので、労働者が望まない場合は有期契約のまま継続します。

4.キャリアアップ助成金との関連

有期契約労働者を正規雇用労働者や無期契約労働者に転換した場合、一定要件を満たせばキャリアアップ助成金が受給できる可能性があります。

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者のキャリアアップ促進を目的に、正社員化や賃金アップなど、労働者の処遇改善を図った企業に対して一定の金額が助成される制度です。
キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、6か月以上雇用実績のある有期契約労働者を正規雇用労働者や無期契約労働者に転換し、さらに6か月継続雇用すると、該当者1人につき助成金が支給されます。
どの契約形態から、どの契約形態へキャリアアップするかで、以下のように助成金の金額が異なります。

キャリアアップ助成金は、雇用契約書就業規則の内容に不整合、未払い残業代、社会保険に正しく加入しているかなどのかなり細かい審査をされ、不備がある場合は是正を受けることもありますが、無期転換ルールの導入の際は、キャリアアップ助成金の申請も考慮に入れて検討すると良いでしょう。

まとめ

パートやアルバイト、契約社員といった非正規社員は、有期労働契約から無期労働契約へ転換を希望できる無期転換ルールがあります。
無期転換ルールによって、パートや契約社員を無期契約労働者や正社員にすることで、企業は優秀な人材の確保や助成金の活用が可能になり、労働者側も雇用条件が良くなるといったメリットがあります。
より働きやすい職場づくりのため、ルールをよく理解し、積極的に活用していきましょう。

『著者:社労士カワモリ』

次の記事へ→

無料相談受付中!
プロの専門家がお悩みをお伺いします。お気軽にご相談ください。
無料相談はこちら



関連記事
Copyright gs-official All Right Reserved.