人事労務解説

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人事労務解説 2022.01.07

コピペOK テレワーク規定の文例を紹介

(後編です。前回まではこちらからお読みください。)

コピペOK テレワーク規程作成の際の注意点

前回までは、テレワーク勤務が進む背景には、コロナウイルスの感染拡大や慢性的な人材不足問題に対する対策があり、テレワーク勤務を導入する際の就業規則の見直しについて解説してきました。
ここからは、テレワーク規程の作成とその文例についてまとめていきます。

4.実際にテレワーク規程を作成してみよう

テレワーク勤務を導入する際は、既存の就業規則にテレワーク勤務に関わる規則を追加するか、もしくは別途新たにテレワーク勤務に関する規程を作成する場合があります。
どちらにおいても、テレワーク勤務に関する規程に追加や変更があった場合は、所轄労働基準監督署への届け出をする必要(従業員数10人未満の会社は届出義務なし)がありますので注意してください。
そもそもの働き方がテレワーク勤務を前提としていれば別ですが、テレワーク勤務に関するルールを新たに規定に設ける方が導入もスムーズだとは思います。
ここからは、テレワーク規程を作成するにあたりポイントを解説していきます。

①就労形態・就業場所

テレワーク勤務で想定されている就労形態は、それぞれ規定を設ける必要があります。もちろん就労形態は限定しても構いません。

『在宅勤務』

自宅で業務を行う勤務です。

『サテライトオフィス勤務』

サテライトオフィスの例としては、スポットオフィス、テレワーク専用サテライト、グループ企業の共同サテライト、レンタルオフィスで勤務することです。

『モバイル勤務』

カフェ、移動中の電車内などで、時間や場所にとらわれず勤務することです。

労働時間

在宅勤務など、通常の労働時間をそのまま適用できるテレワークを実施する場合、就業規則の変更は必要ありません。

③給与・手当

テレワーク導入にあたって、通常のオフィス勤務と人事考課などが異なる場合には、規定に定める必要があります。

④安全衛生

労働基準法では、従業員がテレワーク勤務を行う際に、自宅が安全衛生法に適した作業環境であることを義務づけており、会社が安全衛生に対して一定の基準などを定めた場合は、就業規則を変更しなければなりません。

⑤健康診断

テレワーク導入にあたって、健康管理を自己に委ねることが多くなります。定期健康診断とは異なる健康診断の実施や、産業医による面談等を義務づけることがあれば、就業規則にその内容を追加する必要があります。

⑥セキュリティ

テレワーク勤務を導入にあたり、セキュリティ(服務規律)に関することは重要事項であり、資料の取り扱いルールや情報漏洩防止のための管理方法を定める必要があります。

⑦費用負担

テレワーク導入にあたり、PCやインターネット環境、その他の周辺機器について会社から貸与についての取り扱いや、通信費や光熱費などの従業員が負担する部分の補填として手当の新設を行う場合は規定に定める必要があります。

⑧教育訓練

テレワーク導入にあたって、OJTの機会が減少することがあります。改善策として、テレワーカーを対象とした特別な教育訓練や研修を実施する場合、規定に定める必要があります。

5.コピペOK テレワーク規程の文例

テレワーク規定の文例を実際にご紹介しますので、ご参考にしてみてください。

テレワーク勤務規定

第1章 総則

第1条 (目的)
この規程は、〇〇株式会社(以下「会社」という。)の従業員がテレワーク勤務を実施する際に必要な事項について定める。
テレワーク勤務により、従業員の私生活の向上および生産性の高い働き方を可能とすることを目的とする。

第2条 (定義)
この規程でテレワーク勤務とは、次のとおりとする。また、各勤務について限定して定める場合は、下記勤務の名称で示すものとする。
(1) 在宅勤務 
従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社指定の場所に限る)で情報通信機器を利用した業務をいう。
(2) サテライトオフィス勤務
会社所有の所属事業場以外の会社専用施設(以下「専用型オフィス」という。)、又は、会社が契約(指定)している他会社所有の共用施設(以下「共用型オフィス」という。)で情報通信機器を用いて行う業務をいう。
(3) モバイル勤務
社外(移動中、取引先、著作者宅、カフェ等)で情報通信機器を用いて行う業務をいう。

第2章 勤務等

第3条 (対象者)
テレワーク勤務の対象者は、就業規則第〇条に規定する従業員であって事務、編集・校閲、営業に従事する者とする。
2.前項に依るテレワーク勤務対象者は、次の各号の条件を全て満たした者とする。
(1) テレワーク勤務を希望する者、または業務の都合により会社が命じた者
(2) 社外での業務が円滑に遂行できると所属長が認めた者
(3) 在宅勤務は自宅の執務環境、セキュリティ環境、家族の理解のいずれも適正と認められる者

第4条 (頻度)
(1) 在宅勤務の利用は、原則として週〇回を限度とする。
(2) モバイル勤務、サテライトオフィス勤務の利用は、所属長と協議して決定する。
2.育児・介護・病気等の事由により、会社が一定期間継続して在宅勤務を認めた場合は、前項の規定は適用しない。

第5条(手続き)
在宅勤務を希望する者は、所定の許可申請書に必要事項を記入の上、原則として1週間前までに所属長からあらかじめ許可を受けなければならない。そのうえで、在宅勤務日の前日までに所属長へ利用を届け出るものとする。
2.モバイル勤務、サテライトオフィス勤務の利用手続きについては、所属長が決定する。
3.育児・介護・病気等の事由により一定期間継続して在宅勤務を利用することを希望する者は、原則として○ヵ月前までに会社に申し出て、承認を得なければならない。
4.会社は、第6条の服務規律違反および業務上、その他の事由により、テレワーク勤務の許可を取り消すことがある。

第6条 (服務規律)
テレワーク勤務に従事する者(以下「テレワーク勤務者」という。)は就業規則第〇条及びセキュリティガイドラインに定めるもののほか次に定める事項を遵守しなければならない。
(1) テレワーク勤務の際に所定の手続きに従って持ち出した会社の情報及び作成した成果物を第三者が閲覧、コピー等しないよう最大の注意を払うこと。
(2) テレワーク勤務中は業務に専念すること。
(3) 第1号に定める情報及び成果物は紛失、毀損しないように丁寧に取扱い、セキュリティガイドラインに準じた確実な方法で保管・管理しなければならないこと。
(4) テレワーク勤務中は会社が承認した場所以外で業務を行ってはならないこと。
(5) テレワーク勤務の実施に当たっては、会社情報の取扱いに関し、セキュリティガイドライン及び関連規程類を遵守すること。

第3章 在宅勤務時の労働時間

第7条 (労働時間)
テレワーク勤務時の労働時間については、就業規則第〇条の定めるところによる。
2.前項にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。
3.前項の規定により所定労働時間が短くなる者の給与については、育児・介護休業規程第〇条に規定する勤務短縮措置等の給与の取扱いに準じる。

第8条 (休憩時間)
テレワーク勤務者の休憩時間については、就業規則第〇条の定めるところによる。

第9条 (労働時間中の中抜け)
勤務時間内に私的事由により労働を中断する場合は、予め所属長の許可を得て〇時間を限度に中抜けすることができる。ただし、やむを得ない事情で事前に申し出ることができなかった場合は、事後速やかに届け出なければならない。
2.中抜けした時間に対する給与は支払わない。
3.前項にかかわらず、所属長の許可を得た場合、中抜けした時間を所定の終業時間の後に移動して労働することができる。

第10条 (始業終業時間のスライド)
私的事由により始業終業時間をスライドする場合は、予め所属長の許可を得て行うことができる。

第11条 (移動時間)
在宅勤務またはサテライトオフィス勤務中に自宅・サテライトオフィスと会社または取引先等との間を移動した場合の移動時間は、休憩時間とする。ただし、業務上の事由により在宅勤務またはサテライト勤務中に移動を命じられた場合は、当該移動に要する時間については、労働時間として扱う。

第12条 (所定休日)
テレワーク勤務者の休日については、就業規則第〇条の定めるところによる。

第13条 (時間外及び休日労働等)
テレワーク勤務者は原則として時間外、休日、深夜の労働を行ってはならない。
2.前項にかかわらず、やむを得ず時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は所定の手続きを経て所属長の許可を受けなければならない。
3.時間外及び休日労働について必要な事項は就業規則第〇条の定めるところによる。
4.時間外、休日及び深夜の労働については、給与規定に基づき、時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当を支給する。

第4章 テレワーク勤務時の勤務等

第14条 (業務の開始及び終了の報告)
テレワーク勤務者は就業規則第〇条の規定にかかわらず、勤務の開始及び終了について次のいずれかの方法により報告しなければならない。
(1) 電話
(2) 電子メール
(3) 勤怠管理ツール
(4) 社内チャットツール

第15条 (業務報告)
テレワーク勤務者は、定期的又は必要に応じて、電話又は電子メール等で所属長に対し、所要の業務報告をしなくてはならない。
2.テレワーク勤務者は、適宜行われるWeb会議に参加し、情報共有およびコミュニケーションを図らなければならない。

第5章 在宅勤務時の給与等

第16条 (給与)
テレワーク勤務者の給与については、就業規則第〇条の定めるところによる。
2.前項の規定にかかわらず、在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週に4日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給する。
3.モバイル勤務およびサテライトオフィス勤務の通勤手当については、実情を考慮して決定する。

第17条 (情報通信機器・ソフトウェア等の貸与等)
会社は、テレワーク勤務者が業務に必要とするパソコン、プリンタ等の情報通信機器、ソフトウェア及びこれらに類する物を貸与する。なお、当該パソコンに会社の許可を受けずにソフトウェアをインストールしたり、私的に利用してはならない。
2.前項にかかわらず、会社はテレワーク勤務者が所有する機器を利用させることができる。この場合、セキュリティガイドラインを満たした場合に限るものとする。

第18条 (費用の負担)
会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費で、業務に使用したことが把握できる費用については原則として会社負担とする。
2.テレワーク勤務者が所有する情報通信機器を利用してテレワーク勤務を行うにあたり、新たにセキュリティ環境の確保のためにかかった費用については、原則として会社負担とする。
3.在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
4.業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費、その他会社が認めた費用は会社負担とする。

第19条 (教育訓練)
会社は、テレワーク勤務者に対して、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う。
2.テレワーク勤務者は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受けなければならない。

第20条 (健康管理)
在宅勤務者の健康を保持するために、在宅勤務者は以下の事項に留置しなければならない。
(1) 恒常的な時間外、休日、深夜の労働はしないこと。
(2) 適宜、体操をするなどし腰痛等、体の負荷を軽くすること。
(3) 適正な執務環境(照明、椅子、温度)を保つこと。
(4) その他、上記に準ずる事項

この規則は令和〇年〇月〇日から施行する。

まとめ

テレワーク勤務の導入を実施している会社の多くは、既存の就業規則は変更せずに別途テレワーク規程を新たに作成しています。コロナウイルス感染拡大対策として一時的にテレワーク勤務を導入する場合は就業規則の見直しは必要ありませんが、本格的にテレワーク勤務の導入し、就業規則を見直す際は、本コラムを参考に自社の経営状態や人事方針に沿ってテレワーク規定を作成してみてください。

『著者:社労士カワモリ』

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