(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは外国人を雇用した際に適用される社会保険について解説してきました。
外国人労働者は、原則として日本人と同じ条件で社会保険に加入する必要がありますが、一定の条件のもとで社会保険が免除される場合があります。
ここからは、外国人労働者の社会保険免除制度について解説していきます。
健康保険と厚生年金の加入はセットになっていますので、健康保険には加入するけれども厚生年金には加入しないということはできません。
ただし、厚生年金に関しては例外があり、母国との間に「社会保障協定」が締結されていて、原則5年以内の見込みで出向などにより来日する場合は、免除となります。
外国人が日本で働く場合は、日本の社会保険制度に加入する必要があり、母国の社会保障制度の保険料と二重に負担しなければならない場合がありますが、日本や母国で年金を受け取るには一定の加入期間が必要なため、その国で負担した年金保険料が年金受給につながらないことがあります。
そのような外国人の年金に関する不利益を避けるため、日本と各国間では「社会保障協定」の締結を進めています。
社会保障協定とは、保険料の二重負担の防止と年金加入期間の通算を目的としており、国によって差はありますが、基本的には以下の内容で結ばれています。
・日本での在留期間が5年未満なら、母国の年金に加入する
・日本での在留期間が5年以上なら、日本の年金に加入する
・母国での年金加入期間を、日本での年金加入期間と通算できる
・日本での年金加入期間を、母国での年金加入期間と通算できる
2019年10月1日時点での社会保障協定の発行状況は以下のとおりです。
「保険料の二重負担防止」と「年金加入期間の通算」は、日本とこれらの国の間でのみ有効となります。また、協定によって免除される内容も異なりますので、二国間での協定内容は確認する必要があります。
外国人が一生を日本で過ごすとは限りません。例えば留学生であれば、卒業後、母国へ帰国することも想定され、そのような場合せっかく納めてきた年金の保険料が掛け捨てになってしまいます。
外国人の年金に関する不利益を防ぐもう一つの制度が「脱退一時金」です。
脱退一時金は、厚生年金または
国民年金の加入期間が6か月以上ある外国籍の人が、帰国後2年以内に日本年金機構に申請すると、加入期間等に応じて計算された一時金が支給されるという制度です。
脱退一時金は社会保障協定の対象者でも支給を受けることができますが、その期間は年金加入期間として通算ができなくなります。
社会保障協定が結ばれている場合は、年金加入期間を通算するか脱退一時金を受けるか、どちらが良いか見極めたほうがよいでしょう。
また、脱退一時金の請求は、住所がまだ日本にある場合には、脱退一時金は請求できません。住んでいる市区町村に転出届を提出した後で、脱退一時金を請求しなければいけないので注意が必要です。
外国人労働者を雇用する際、日本人と同様に、給料に応じた保険料を納めることになりますが、保険料が掛け捨てになるのではないかとの不安から、外国人労働者が社会保険に加入したがらない場合もあると思います。
日本の年金制度は外国人の二重払い防止や保険料の掛け捨てを防ぐための制度が設けられていますので、日本は皆保険・皆年金であることを伝えるとともに、社会保障協定や脱退一時金の請求などにより短期間での加入でも掛け捨てにならないことなど、日本の社会保険制度を丁寧に説明し、納得して加入してもらうよう努めましょう。