(後編です。前回まではこちらからお読みください。)
前回までは、同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正社員であるか、非正規労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給し、福利厚生等の待遇に不合理な差をつけることを禁止するという考え方について解説してきました。ここからは、同一労働同一賃金の導入の注意点をまとめていきます
基本的には、非正規労働者と正社員との待遇差は完全に撤廃するのが理想的です。
法改正に伴い、非正規労働者は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に説明を求めることができるようになり、事業主は、非正規労働者から求められた場合は、説明をしなければなりません。先で述べたように待遇差はないのが理想ですが、しかしながら、正社員と非正規労働者で働き方や役職などが異なるのであれば、その役割に応じて賃金や待遇差が発生することがあり得ます。
発生する場合は、その理由が合理的であることを説明しなければなりません。
たとえ、説明しても従業員が納得できないようであれば、それは合理的な理由とは言えないため、考え直す必要があります。強行すれば法的な争いに発展する可能性もあるため注意が必要です。
不合理とされる待遇差が生じやすいのは、一般的には以下です。
• 通勤手当
• 出張手当
• 休日労働手当
• 時間外労働手当
• 役職手当
• 精皆勤手当
• 資格手当
• 食事手当
• 無事故手当
待遇差が発生しても合理的な理由があれば、不合理とされないことが多いのは以下です。
• 基本給
• 賞与
• 退職金
• 住宅手当
• 扶養手当
• 家族手当
同一労働同一賃金は、違反したからといって法的な罰則が与えられるわけではありませんが、しかしながら、従業員から損害賠償を請求される可能性はあり、非正規労働者が正社員との待遇差が不合理であると訴え、企業が敗訴した判例もあります。
この場合、格差を補填するために、多額の資金を投入することになり経営を逼迫することがあり得ます。
また、待遇差を是正する際に注意しなけなければならないのが労働契約法になります。労働契約法では、就業規則の変更の変更により従業員が不利益を被る場合は、労働者の過半数を代表する者あるいは労働組合の合意・意見を得なければならないと規定されています。
たとえば、同じ仕事に就いているが正社員と非正規労働者という理由だけで、賃金と福利厚生に待遇差があり、格差を埋めるために正社員の賃金を下方修正した場合は、正社員が不利益を被ることになるため、労働者の過半数を代表する者あるいは労働組合の合意・意見を得てからでなければ、その改定は適用できず、もし合意を得られなければ、正社員の賃金を下げるのではなく非正規労働者の賃金を上げる等で格差を撤廃する必要があります。
合意を得ずに、就業規則の変更の改定を強行すると紛争問題にも発展する可能性があるため注意が必要となります。待遇差を解消する際は従業員の合意を得ることが大切です。
同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正社員であるか、非正規労働者であるかを問わず、不合理な差をつけることを禁止するという考え方です。企業は、従業員が求めた場合、格差の合理的な説明義務があります。違反時には損害賠償請求のリスクの可能性もあるため、適切な対応をしましょう。